第4章

洗面台の血を見てから、一睡もできなかった。

四時間が過ぎ、鉛を飲み込んだような疲労感が、全身を苛んでいた。瞼を閉じるたびに、あの鮮烈な赤い雫が脳裏に浮かんでくる。自分の身体が、想像以上の速さで壊れていっているという、動かぬ証拠だった。

階下では、伊佐美がもう起きていた。リビングに敷かれたヨガマットの上で、流れるような動きで朝のルーティンをこなしている。彼女の寸分の狂いもない完璧なポーズが、私の手の震えをあざ笑っているかのようだった。

土曜の朝の静寂を、けたたましい呼び鈴の音が切り裂いた。

「はーい!」伊佐美は元気いっぱいに、優雅な動きで立ち上がった。

廊下の向こうから、...

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